ミュジコロール・ミュージック アドベントカレンダー

去年の11月に突然思いついて企画したInstagramでの「Adventミュージックカレンダー」。ミュジコロールに通うピアノの生徒さんで、毎日クリスマスの曲を一曲ずつアップしていくカレンダーです。慌てて曲を決め大急ぎでレッスンで仕上げ、1日も落とすことなく、参加表明をしてくれた24人が見事にバトンを繋いで、完成させることができました。急遽お知らせのプリントを作成して配り、半ば強引に弾く曲を決めてから練習期間に充てられた時間は、それぞれ2〜3週間、長くて1ヶ月程度。その上、12月上旬はほとんどの学校で期末テストがあり、練習時間が取れなかったりレッスンに来られなかったりで、わりとスリリングな毎日を送りました。
 12月1日のカレンダー・スタートを前に、7日分はしっかり撮り溜めておき、その後は順を追って撮影&編集をしていきました。編集と言っても、曲目を入力したり演奏の前後をカットする程度の簡単な加工しかできないので、とにかく傷なしで一曲通して(切り貼りが必要ないように)撮影することが最優先。小さい子達は曲が短いのですんなり数回で撮れるのですが、大きい方達は曲が長くて難しいのに準備期間が足りていない(私の責任です…)という冷や汗が出まくる状況でした。中には11回撮り直した人や、1時間ビデオカメラの前で頑張ったものの納得いくように弾けず、一度家に戻って冷静に練習してから、翌日改めて撮り直した人もいました。
 無茶振りに応えて讃美歌を歌ってくれた聖歌隊の女の子、突然「私もやる時はやるわよ!」と集中力を発揮してくれた小・中学生、そして高いパフォーマンス能力で弾いてくれた大人の生徒さん達には、いつもと違う一面を見せてもらいました。
サプライズでは、シンガポールとウィーンに住んでいる元生徒さん2人が、東京の後輩たちの為に現地で撮影&編集をした動画を送ってくれました!
私が知らぬ間に、なんて頼もしくて暖かい心を持った人に成長したのだろう…嬉しくて涙が出しました。

 クリスマスソング、聖歌(讃美歌)、クラシックの曲、ジャズ風アレンジなど様々なクリスマスにまつわる曲を取り上げましたが、幼児から小学生ぐらいまでの生徒さん達にとっては、意外と知らない曲が多かったようです。そんな会話をレッスンでしたり、毎日動画を見ているご家族が感想を聞かせてくださったりと、毎年の発表会とは違うコミュニケーションが生まれました。

音楽をアップしていくだけでなく、並行して様々な国のクリスマスの様子をクイズ形式で出題したり、外国のクリスマスの習慣を紹介しました。
国や街では、オーストラリア、ロシア、ウィーン、パリ、ベツレヘム、ハワイ、ローテンブルク、カナダなどのクリスマスの写真を見つけてきて投稿しました。
習慣では、ユダヤ教のハヌカ、ロシアのマローズ爺さんアドベントキャンドルシュトレンエピファニージンジャークッキー聖ニコラのパレードキリストの生誕シーンを再現したクレッシュなどを紹介しました。
私自身、調べながら新たに発見することも多く、例えばウクライナでは、これまでロシア正教と同じユリウス暦の日程でクリスマスを祝っていたのが、今年からロシアと区別するためにカトリック式のグレゴリオ暦を採用することにした、とか。パレスチナ側にあるキリストの生誕地ベツレヘムでは今年はクリスマスの儀式を中止にしたという悲しいニュースもありました。

聖ニコラのパレードの裏にはアメリカで広がったサンタクロースの習慣に反発した暴動があったり、坂本龍一の戦場のメリークリスマス、ジョン・レノンのハッピークリスマスのような作曲家の政治的メッセージが込められた曲、そして今年はキリストの生誕の地で残酷な戦争が続いていたり…と、クリスマスの表と裏をひたすら見続けた24日間でもありました。
 おもしろネタで言えば、「ジングルベル」は本来11月の感謝祭のために作曲された曲で、タイトルは「馬ぞり」。サンタクロースやトナカイとは無関係の、馬ぞりの楽しさを歌っているのだそう。また「サンタはママにキッスした」は、歌詞の内容をボストンのカトリック教会から非難されたため、歌っていたボイドが大司教区に説明に行き、話し合いの末ようやく解禁になったというエピソードもあるようですね。

 いつもなら、12月は時の経つ早さにただ驚きながら、やるべき事に追われてあっと言う間に過ぎてしまう師走ですが、今年はクリスマスまでの一日一日が非常に長く感じられました。とにかく「先生が思いついた企画のために、私も一曲弾かなくては!」と、責任を持って頑張ってくれた生徒さん達、そして協力してくださった保護者の皆様と多くを共有できたことは思いがけない収穫でした。教室を拡げる方向ではなく、一度中身をとことん充実させたいと思って始まった2023年を、《やり尽くした感》を持って締めくくる最後のイベントになりました。今年始めた変革は、来年以降も続きます。
 願わくは、私の独りよがりや自己満足で終わらずに生徒の皆様にも何か受け取っていただけていたら、これ以上幸せなことはありません。